【コラム】容器の識別表示は事業者の義務!ルールを詳しく解説
飲料や食品に用いられる容器の製造事業者、利用事業者は、商品に識別表示のマークを付けることが法律で義務付けられています。容器の識別表示にはデザインやサイズ、表示方法などに一定のルールがあるので、飲料や食品の販売事業者は基本的な決まりや注意点をチェックしておきましょう。
今回は識別表示の基礎知識と、基本的なルールや注意点について解説します。
識別表示の目的や、義務対象となる容器、義務者など、基本的な知識について説明します。
識別表示の目的
識別表示は、消費者がごみを出す際の分別を容易にし、自治体の分別収集を促すことを目的としたものです。
食品や飲料の容器は適切に分類し、処分すれば再度資源として回収・利用することが可能ですが、その容器がどのような素材で作られていて、どのごみに分別されるのか、見た目だけで判断するのは困難です。
そこで資源有効利用促進法では、一目見ただけで消費者が容器を分別しやすいよう、容器に識別表示マークを付けることを義務付けています(※1)。
識別表示は、リデュース(廃棄物の発生抑制)・リユース(再使用)・リサイクル(再資源化)の3つを促進して、環境と経済が両立する循環型社会の形成を目指す3R政策に欠かせないものです。一方で、近年では人類が地球で暮らし続けていくために達成すべき目標(SDGs)の観点からも注目を集めています。
SDGsでは17の目標が抱えられていますが、12番目の目標である「つくる責任つかう責任」は識別表示に基づく分別と密接な関係があるからです。(※2)
識別表示のルールをきちんと守ることが大切です。
※1 参考:経済産業省「3R政策」
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/mark/index.html
※2 参考:公益財団法人 日本ユニセフ協会「SDGsって何だろう?」
https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/about/
識別表示の義務対象となる容器包装
識別表示の義務対象となるのは、以下5つの容器包装です(※)。
なお、紙製容器包装に関しては、アルミ不使用の飲料用紙パックと、段ボール製容器包装は対象外です。
また、3のPETボトルは、醤油や乳飲料など、その他調味料や清涼飲料、酒類などが入った内容積150ml以上のペットボトルを意味しており、それ以外のものは1のプラスチック製容器包装に分別されます。
ちなみに、内容積が150ml未満のPETボトルは義務対象外となります。
※ 参考:公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会「識別表示」
https://www.jcpra.or.jp/container/obligation_penalties/Identific/tabid/110/index.php
識別表示の義務者
容器に識別表示を付ける義務を負うのは、以下の事業者です(※1)。
● 容器・包装を利用する事業者
● 容器の製造事業者
● 容器・包装を付した商品の輸入販売事業者
上記いずれかに当てはまる事業者は、事業の規模に関わらず義務対象者となります。
再商品化義務が免除される小規模事業者(常時使用する従業員の数が20人(商業またはサービス業は5人)以下の事業者)であっても、識別表示の義務者となるので注意しましょう(※2)。
※1 農林水産省「適切な識別表示が容器包装のリサイクルを促進します。」P1
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/y_sikibetu/attach/pdf/index-1.pdf
※2 中小企業庁「第1章 小規模事業者の実態」
容器の識別表示を付ける際は、以下のような一定のルールを遵守する必要があります。
デザインに関するルール
識別表示のデザインは、省令によってベースとなる様式が決まっていますが、消費者にとって分かりやすいデザインであれば一定の加工をしてもよいとされています。
具体的には、色やフォントを変更する、抜き文字といった文字飾りを付ける、線の幅を変えるなどの加工を行うことも可能です。ただし、加工を施すことによって鮮明度や識別性、注目度が落ちてしまうデザインはNGなので気を付けましょう。
例えば、容器と同じ系統の色を使用したり、フォントや文字飾りにこだわりすぎたりすると、「どこにマークがあるか分からない」「一目で内容を視認できない」などの問題が発生するので要注意です。
また、デザインについては業界ごとにガイドラインを定めているケースもあります。ガイドラインに沿わず、独自のデザインやレイアウトを採用すると消費者を混乱させたり、誤解を招いたりする原因になるので、ガイドラインがある場合はなるべく参考にすることをおすすめします。
サイズに関するルール
識別表示のサイズは、見やすさを向上させるために、一定の大きさにすることが義務付けられています。
紙製容器包装およびプラスチック製容器包装で、識別表示を容器に直接印刷、またはラベルを貼り付ける場合は、上下の長さが6mm以上である必要があります(※)。
一方、容器に刻印またはエンボス加工を施す場合は、上下長を8mm以上確保する必要があります(※)。なお、上記2つのルールを遵守した上で、サイズを大きくするのは問題ありません。
例えば、容器の大きさに合わせて上下長を1cmや3cmなどにしてもOKです。
※ 農林水産省「定められた表示マークを基本とした上で、定められたサイズで表示」P1
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/y_sikibetu/pdf/data04.pdf
表示方法に関するルール
識別表示は容器の表面に1箇所以上、かつ原則として個々の容器に対して直接表示しなければなりません。例えば蓋付きの容器の場合、蓋と容器本体の両方にそれぞれ1つ以上の識別表示を付ける必要があります(※1)。
例外として、ほぼ同時に捨てられる複数の容器がある場合(カップ麺の蓋と容器など)は、蓋あるいは容器のいずれかに一括で識別表示を付けてもよいとされています。
また、容器の利用事業者がその容器を利用する時点、および輸入販売事業者がその容器を販売する時点で表面に識別表示が付されていない無地の容器に関しては、直接の表示を省略することが認められています(※2)。
一例として、お客さんが購入した商品を入れる無地の買い物用ポリ袋については、直接の表示を省略してもOKです。
ただ、複数の容器包装を用いた商品で、無地の容器包装の他に識別表示義務のある容器包装がある場合は、そちらの方に一括表示する必要があります。例えば、外箱と無地の外装フィルムから成るお菓子がある場合、外装フィルムへの表示を省略する代わりに、外箱にまとめて表示することになります。
※1 参考:農林水産省「原則として個別表示であるが、多重容器包装には「一括表示」も可能」P1
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/youki/y_sikibetu/pdf/data05.pdf
※2 経済産業省「容器包装の識別表示Q&A」Q.26
容器の識別表示に関して注意しておきたいことを2つご紹介します。
ルールに反則すると罰則を受ける
容器の識別表示は資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)第24条に定められているルールなので、違反すると同法第25条の規定により、主務大臣からの勧告を受けることになります(※)。
勧告に従わない場合、その旨が公表され、それでも改善されない場合は主務大臣から識別表示を付けるよう命令が下されます。その命令にも従わない場合、同法第42条の規定により、50万円以下の罰金となるので注意が必要です(※)。
また、勧告から罰金までの過程においては、必要に応じて業務状況の報告を命じられたり、立入検査が実施されたりすることもあります。
最終的な処分は罰金刑となりますが、法律に違反していたことが公表されると企業のイメージが大幅にダウンし、今後の事業に支障をきたす恐れがあるので、ルールはきちんと守りましょう。
※ e-Gov法令検索「資源の有効な利用の促進に関する法律」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000048_20230401_504AC0000000046
法令が変更される可能性もある
法令や省令は時代などに合わせて適宜改正される可能性があります。
資源有効利用促進法についても、令和2年4月1日に省令が改正され、一部の外装への識別表示に関するルールに変更が加えられました(※)。もし今後同じような改正が行われた場合、現行のルールが大きく変更される可能性があります。
法改正に気付かず、以前のルールのまま識別表示を行っていると、知らないうちにルール違反を犯してしまうことになりかねませんので、法改正に関する情報は定期的にチェックしておきましょう。
※ 参考:公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会「令和2年4月1日から「資源有効利用促進法の省令一部改正に伴う識別表示のルール変更」のお知らせ」
https://www.jcpra.or.jp/news/tabid/101/index.php?Itemid=1907
食品や飲料などに用いられる容器包装には、識別表示を付けることが義務付けられています。
容器包装を利用する事業者や、容器の製造事業者、容器・包装を付した商品を輸入販売する事業者は、事業の規模に関わらず義務対象者となるので、ルールの遵守に努めましょう。
なお、識別表示はサイズやデザイン、表示方法に規定があるので、要件をきちんと満たしているかどうか留意する必要があります。これらのルールに違反した場合、勧告や命令を受けたり、その事実を公表されたりする他、最終的には罰金刑の対象となるので注意しましょう。