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2022年12月26日

【コラム】酸性に強いプラスチックの種類とは? それぞれの特徴について解説

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プラスチックの中には、酸性に対して強い種類と弱い種類があります。特性をしっかりと理解しておくことで、薬品などを最適なプラスチック容器に保管することが可能です。そこで今回は、酸性に強いプラスチックの種類について解説します。

 

■そもそも酸性とは

酸性やアルカリ性といった言葉は知っていても、具体的な違いについては曖昧な方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まずは、酸性の定義や身の回りにある酸性のものをご紹介します。

 

・酸性の定義

酸性とは、酸の性質をもつものです。
主に水溶液に使うアレニウスの定義と、アレニウスの定義を発展させたブレンステッドの定義があります。

つまり酸とは、水素イオンをもっていて他の物質に与えられたり、電子対を受け取ったりする物質です。
また、溶液の場合にはpH(水素イオン濃度指数)が酸性とアルカリ性の中間である7よりも低いものを酸性と言い、酸性の溶液は青色のリトマス試験紙を赤色に変えます。

アレニウスの定義 酸は水素を含み、水に溶解すると水素イオンとアニオンに解離する物質
ブレンステッドの定義 酸は他の物質にH⁺(プロトン)を与えられる物質

・身の回りにある酸性のもの

身の回りにはさまざまな酸性のものがあります。
酸性を示す食べものは多く、白米や大麦・小麦粉・オートミール・とうもろこし・うなぎ・ハム・バターなど、身近な穀物や動物性食品の多くが該当します。
飲みものであれば、ビールはpH4.5前後、ワインはpH3前後、コーラはpH2前後の酸性です。
酸性を示す穀物や動物性食品は調理しやすいため、毎日たくさん摂取している方もいるかもしれません。
しかし、酸性の食品をたくさん食べてしまうと体内のpHが酸性に傾き、免疫力の低下や虫歯が進行しやすくなると言われています。

 

■酸性に強いプラスチックの種類の特徴について

先述したように、強い酸性は鉄などの金属を溶かす性質がありますが、プラスチックの中にも酸性に対して強い種類と弱い種類が存在します。
ここでは、酸性に強いプラスチックの種類と特徴を紹介するので、最適な樹脂容器を選んで適切に保管しましょう。

 

・PVC(ポリ塩化ビニル樹脂)

合成樹脂の一つでもあるポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルを重合させたものです。略してポリ塩化ビニルや塩化ビニル樹脂、塩ビとも呼ばれます。
ポリ塩化ビニル樹脂の主な特徴は、以下の通りです。

長所  安定性:長期間にわたり強度を維持できる
 耐久性:劣化しにくい
 耐薬品性:ほとんどの酸・アルカリ・塩類などに強い
 難燃性:他のプラスチックは可燃性であるが、塩ビは燃えにくい
 耐食性:サビたり腐食したりしない
短所  耐熱性:太陽光を浴び続けると反りの原因となる
 有機溶剤に弱い:アセトンやシンナーなどに溶ける

・PE(ポリエチレン)

ポリエチレンはプラスチックの中では弾性率が低く、やわらかい材料に分類されます。
耐薬品性とやわらかく加工性が高い特徴を利用して、樹脂容器や包装用フィルムに多く用いられているのが特徴です。
ただし、強い酸に対しては酸化劣化を起こす点に注意してください。
ポリエチレンの主な特徴は、以下の通りです。

長所  耐薬品性:耐薬品性が高い
 耐油性:石油タンクなどの素材にも利用される
 柔軟性:伸びやすく衝撃に対して強靭(きょうじん)
 防水性:吸水性がほとんどない
短所 ● 耐熱性:火や熱に弱い
● 透明性:透明性低く半透明に見える
● 耐候性:屋外で使用すると変色や劣化しやすい

・PP(ポリプロピレン)

ポリプロピレンはポリ塩化ビニルやポリエチレン、ポリスチレンなどと並ぶ汎用(はんよう)樹脂の一つです。樹脂容器はもちろん、容器のキャップやトレイなどにも使用されています。
ポリプロピレンの主な特徴は、以下の通りです。

長所 ● 加工性:成形加工性に優れる
● 耐薬品性:耐薬品性が高い
● 絶縁性:電気を通しにくい
● 耐ストレスクラック性:薬品中に放置し荷重をかけても壊れにくい
短所 ● 耐候性:屋外で使用すると変色や劣化しやすい
● 帯電性:静電気を帯びやすい
● 衝撃性:低温では衝撃に弱い

・ABS樹脂

ABS樹脂とは、「アクリロニトリル」「ブタジエン」「スチレン」の3種類の成分を組み合わせた高性能な合成樹脂です。
機械的性質のバランスが整っていて硬度もあるので、電気製品や自動車のパーツなど、さまざまなところで使われています。
ABS樹脂の主な特徴は、以下の通りです。

長所 ● 耐衝撃性:外部からの力に対する抵抗力である耐衝撃性が高い
● 加工性:成形加工性に優れる
● 接着性:溶剤接着に向く
● 剛性:機械的強度が高い
短所 ● 耐候性:屋外で使用すると変色や劣化しやすい

・PMMA(アクリル)

アクリルは優れた強度と透明性、屋外でも劣化しない耐候性をもっていることから、「プラスチックの女王」と言われる素材です。樹脂容器などの日用品をはじめ、水槽や飛行機の窓にも使用されています。
アクリルの主な特徴は、以下の通りです。

長所 ● 透明性:光線透過率はガラスをしのぐ
● 加工性:成形加工性に優れる
● 耐候性:太陽光や風雨・雪などにも強く屋外で使用できる
● 耐久性:10~20年程度の耐久性がある
● 耐衝撃性:ガラスの10~16倍
短所 ● 接着性:キャスト材の場合接着強度が低い
● 摩擦に弱い

・フェノール樹脂

フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類の2つからなる合成樹脂で、人工的に作られた最も古いプラスチック素材とされています。
現在、自動車・建築・医療分野などで重宝されていますが、身近な日用品としてはあまり使用されていません。
フェノール樹脂の主な特徴は、以下の通りです。

長所 ● 耐酸性:耐酸性に優れている
● 耐熱性:高温時でも強度を保持できる
● 耐溶剤性:溶剤に浸っていても変化しにくい
● 絶縁性:高い電気絶縁性をもつ
短所 ● 耐アルカリ性:アルカリに弱い
● 耐衝撃性:衝撃に弱い

・エポキシガラス

エポキシガラスはガラス繊維にエポキシ樹脂を染み込ませ、熱硬化させた積層棒です。
エポキシガラスのほか、ガラスエポキシ・エポキシガラス樹脂とも呼ばれ、経年変化とともに、緑色が黄色から茶色に変化します。 エポキシガラスの主な特徴は、以下の通りです。

長所 ● 耐薬品性:ほとんどの溶剤に反応しない
● 耐熱性:高温時でも強度を保持できる
● 剛性:機械的強度が高い
● 絶縁性:高い電気絶縁性をもつ
短所 ● 靭性:靭性(じんせい)が低い
● 耐候性:紫外線に弱い

・PVDF(ポリフッ化ビニリデン)

ポリフッ化ビニリデンは、フッ素系樹脂の中で最高の強度を誇ります。
PVDFの主な特徴は、以下の通りです。

長所 ● 耐薬品性:酸やアルカリの影響を受けない
● 剛性:フッ素系樹脂の中では最高の強度
● 加工性:他のフッ素樹脂に比べて加工性が高く、溶接も可能
● 耐候性:屋外の使用に耐える
短所 ● 耐薬品性:アミン・エステル・ケトン・環状エーテル・アミド類に対して耐薬品性が悪い

 

■まとめ

プラスチックの中には、酸性に対して強い種類と弱い種類があります。
ポリ塩化ビニル樹脂やポリプロピレンなど、酸性に強いプラスチックにもさまざまな種類があるので、一つひとつの特徴を理解して最適な樹脂容器を選びましょう。

 

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