【コラム】プラスチック容器の寿命はどのくらい? 劣化の要因について解説。
プラスチックには劣化による寿命があります。プラスチックが劣化する要因を知っておくことで、寿命が早まるのを防ぐことが可能です。今回は、プラスチック容器の寿命について紹介します。
プラスチック製品を使用し続けているうちに劣化に気付くこともあるのではないでしょうか。
以下では、プラスチックの主な劣化要因を3つ紹介します。
プラスチックの素材自体が、時間の経過とともに変化して劣化する場合があります。
経時変化の主な原因は以下の3つです。
●熱可塑性樹脂(ねつかそせいじゅし)の反応の続行(重合)
●熱硬化性樹脂、ゴムの硬化反応進行
●ゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)における可塑剤(かそざい)の揮散
熱可塑性樹脂とは、熱を加えるとやわらかくなり、冷却すると固くなるプラスチックです。
代表的なものには、ポリプロピレン樹脂やナイロン樹脂、ポリエステル樹脂などがあります。
これらは「鎖状分子構造」となっており、時間の経過とともに水や湿度変化、化学物質、太陽光などの影響で化学結合が切れ、劣化が進みます。
熱硬化性樹脂とは、熱可塑性樹脂とは反対に、熱を加えると硬化するプラスチックです。網目構造をもつ高分子化合物で、時間とともに硬化が進むと強度に影響します。
ゴム、ポリ塩化ビニル(PVC)における可塑剤(かそざい)の揮散とは、ゴムやポリ塩化ビニルに添加された物質が気化して大気中に拡散することです。
このように、何の影響も受けていない状態であっても、時間の経過によってさまざまな反応が進み、劣化してしまいます。
単一の外的要因による変化とは、以下のようなものの影響を受け、プラスチックの素材が劣化してしまうことです。
●応力、歪み(繰り返し負荷、長時間負荷)
●熱
●光(主に紫外線)
●電気
●放射線
●環境物質
●微生物
プラスチックの種類によって、耐熱性や耐水性、耐衝撃性、耐候性など、耐えられる特性が異なるため、上記のような外的要因に対する耐性もプラスチックの種類によって異なります。
プラスチック容器を選ぶ際は、使用する環境に対しての耐性があるかどうかをしっかりと確認しましょう。
「紫外線×雨」や「環境物質×歪み」など、単一のものではなく複数の要素が同時に影響するケースがあります。
プラスチック容器の劣化を防ぐためには、先述の通り、使用する環境に耐性をもつプラスチック素材を使用することが大切です。
以下では、プラスチックの劣化の主な外的要因を解説します。
応力とは、物体が外部から力を受けた際に内部に生じる力です。
たとえば、気泡やひび割れ、異物の混入、成形不良などが劣化の要因となる場合があります。
プラスチックに熱が加えられると分子運動が活発化します。その後、空気中の酸素と反応して分子構造が変化する仕組みです。
その分子構造の変化が樹脂製部品の収縮や性能の変化を招く原因となり、劣化につながります。プラスチック容器を使用する際には、耐熱温度を守ることで熱による劣化を防ぐことが可能です。
プラスチックが光エネルギーを吸収することで、分子同士の化学結合が切断されます。
光によるプラスチック容器の劣化の例は、以下の通りです。
物性の変化 |
分子量の低下 |
強度や衝撃強度の低下 |
外観の変化 |
光沢の低下 |
変色 |
プラスチック容器の光による劣化は、紫外線劣化と呼ばれる場合もあります。特に屋外で長期間プラスチック容器を使用すると、光によって劣化し寿命が早まる可能性が高くなります。
ポリカーボネート(PC)やポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレクタラート(PET)など、一部のプラスチックは加水分解を起こす性質があります。メカニズムとしては、「プラスチックのエステル結合が、水によって遮断されることで二酸化炭素が発生し、加水分解する」といったものです。そのため、水をよく使用する環境では、必ず耐水性のあるプラスチックを選んで使用しましょう。
金属や金属化合物がプラスチックに触れると、金属イオンがプラスチックの酸化反応を促進させ、劣化を招くケースがあります。金属の中ではコバルトやマンガンがプラスチックに影響をおよぼしやすい元素です。
また、高温になると銅に反応するポリプロピレン(PP)やABS樹脂を金属の近くで使用する場合は、安定剤添加のような対処が必要です。
有機溶剤はプラスチック製品と似たような構造をもっており、材料内に取り込まれやすい傾向があります。ただし、有機溶剤とプラスチックの相性は、構造以外の要素にも左右されるため、判断する際は注意しましょう。
有機溶剤を扱う場面で劣化を防ぐには、安全性についてメーカーに都度問い合わせるのがおすすめです。
促進劣化試験とは、プラスチック製品の寿命を予測する、最も一般的な方法です。
特に、プラスチック製の自動車部品や工業用部品、実験器具などを使用している方の中には、部品や器具の交換時期を把握するためにも、プラスチック製品の寿命をある程度予測したいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのような方は、以下4つの方法で寿命予測ができます。
ただし、専門的かつ複雑な内容となっているため、寿命を調べる際は専門家に依頼するのがおすすめです。
また先述の通り、プラスチック製品の劣化の原因はさまざまであり、正確な寿命の予測は難しいことを前提とする必要があります。
アレニウス法は、寿命予測法として一般的に用いられている方式です。
ISO(国際標準化機構)、ASTM規格などで採用されており、「速度定数の対数は、絶対温度の逆数に比例する」という理論に基づいて寿命を評価します。
時間−温度換算則法は、時間とともに減少する弾性率を予測する方式です。
基準温度よりも温度が高い環境で試験を実施し、 マスターカーブ(合成曲線) を描くことで、寿命を予測できます。
S−N線図法は、応力と破断までの繰り返し回数の関係を示した曲線「S-N線図」を作成し、寿命を予測する方式です。通常レベルのストレスをかけた状態における寿命を予測できます。
なお、S-N曲線のSは「Stress」の頭文字で「繰り返す負荷」を指しており、Nは「Number of cycles to failure」の頭文字で「破断までの繰り返し数」を指しています。</p> <h4>・マイナー則法</h4> マイナー則法はいつ疲労破壊を起こすかを見積もるのに用いられる方式です。
プラスチック製品に累積された負荷から残存寿命を予測します。
プラスチックの劣化の要因は、材料自身の経時変化や外的要因による変化などさまざまです。 外的要因は応力や熱、光、水などさまざまで、プラスチック容器を選ぶ際は、そのプラスチックが使用する環境に対して耐性があるかどうかをしっかりと確認しましょう。
なお、プラスチック製の自動車部品や工業用部品、実験器具などを使用している関係で、プラスチック製品の寿命をある程度予測したいと思っている方は、プラスチックの寿命を調べる促進劣化試験がおすすめです。