【コラム】プラスチック容器のリサイクルにはどんな決まりがある?プラスチックが抱える問題についても紹介
プラスチックは非常に便利な素材ですが、環境に与える負荷の大きさがしばしば問題に挙げられます。そのため、リサイクルなどの環境に配慮した取り組みが重要です。今回は、プラスチック容器のリサイクルやプラスチックが抱える問題について、紹介します。
プラスチックは、適切にリサイクルすることでエネルギー消費量や二酸化炭素の排出量が減り、環境保全につながります。まずはプラスチック容器のリサイクルについて定められた「容器包装リサイクル法」について知り、リサイクルに関しての知識を深めましょう。
「容器包装リサイクル法」は、ごみの排出量削減と資源の有効活用を目的として平成7年(1995年)に制定された法律です。施行当時は家庭ごみの約6割が容器包装で、数年後には埋立地がごみで溢れてしまうような状況の中、この法律によって容器包装のリサイクル制度が構築され、現在のごみの分別・回収、リサイクル方法が整いました。以降、一般廃棄物の最終処分量は平成30年時点で約7割も減少し、プラスチックごみの削減に大きく貢献しています。
「容器包装」について、容器包装リサイクル法では消費や分離によって不要となった製品の容器・包装と定義しています。ガラス製容器・PETボトル・紙製容器包装・プラスチック製容器包装の4つがリサイクルの対象となり、対象商品は識別マークの表示が義務付けられています。プラスチック製の容器包装は日常のあらゆる場所で使われており、例としてプリンのカップや精肉の発泡スチロールトレイ、レジ袋などが挙げられるでしょう。
プラスチック容器のリサイクルは、消費者による「分別」、市町村の「分別回収」、再生処理事業者の「再利用化」で成り立っており、「材料リサイクル」と「ケミカルリサイクル」という2通りのリサイクル方法で再利用されています。
<材料リサイクル>
材料リサイクルとは、使用済みプラスチックを加熱・再加工して別のプラスチック製品に再利用する方法です。再生プラスチック工場に運ばれたベールは、手作業または風圧・浮力によってさらに異物が取り除かれた後、粉砕・洗浄・脱水・乾燥・成形を行い、パレットなどの作業用資材として再生されます。材料リサイクルによってプラスチック容器全体の約4割以上が再利用されており、プラスチック容器のリサイクルにおいて大きな役割を果たしていると言えるでしょう。
<ケミカルリサイクル>
ケミカルリサイクルは製鉄所または化学工場にて行い、廃棄されたプラスチックを化学分解して原料に戻してから再利用する方法です。ベールに残ったリサイクル不可能な異物を取り除いた後だんご状に固められ、熱によって油・ガス・コークスに分解されます。分解された資源はプラスチックの原料や化学原料、発電ガスに再利用できます。
容器包装リサイクル法によって日本のプラスチックごみは年々減量傾向にある一方、プラスチックが抱える問題は深刻になっています。現在心配されている大きな問題について、把握しておきましょう。
「海洋プラスチック問題」とは、ポイ捨てや不適切な処理によって丈夫で安定性の高いプラスチックが海に流れ込むと、何十年あるいは何百年も分解されずに海中に残ってしまう問題です。プラスチックごみは現在海洋ごみの約6割を占め、2050年には魚の量を上回り、海の生態系へ影響を及ぼすことが懸念されています。
「マイクロプラスチック問題」とは、5mm以下の微小なプラスチックごみが海に放出されてしまう問題です。主に海岸や川に捨てられたプラスチックごみが長い時間をかけて分解されたり、歯磨き粉などに混ぜられたプラスチック粒子が下水道を通って海に流れ込んだりすることが原因と言われています。マイクロプラスチックは有害物質を含むことが確認されており、海洋の生態系にダメージを与え、海洋生物を通じて人体に入り込んでしまう可能性もあります。
こうしたプラスチックが及ぼす環境問題を解決するには、「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の3Rを目指していくことが大切です。Reduceとは使用する資源量を減らすこと、Reuseは使用済み製品を捨てないで繰り返し使うことを指します。特にプラスチックごみは海洋ごみの半分以上を占めるため、削減するにはReduceへの取り組みが大変重要です。
環境に配慮した容器を選ぶ際には、次のようなポイントに留意することが大切です。
プラスチック容器の中には紙や金属といった他の素材が複合され、分別の基準がわかりにくかったり洗えなかったりするものもあります。容器の分別が困難になると可燃ごみで廃棄されてしまい、CO2排出量が増加するうえに地球温暖化の加速につながります。消費者が分別しやすいものを選び、識別マークを表示することで、容器を資源として有効活用できるようになるでしょう。
容器のリサイクル率を上げてごみを出さないことはもちろん大切ですが、それでも海洋プラスチック問題やマイクロプラスチック問題への懸念は払拭できません。そのため、最近ではリサイクル可能な素材を使ったものやエコな容器が開発され、環境にやさしい素材として選ぶ企業が増えています。
<FSC認証の紙容器>
「FSC認証」とは、Forest Stewardship Council(森林管理協議会)が定める、適切な森林管理を認証する制度のことを指します。森林の破壊や減少も環境保全において深刻な問題とされていますが、私たちが生活を営むうえで、木材や森林の使用は欠かせません。そこで、適切な管理が行われる森林の木を使ったFSC認証の紙容器を採用し、森林を破壊・劣化させずに木材を消費しようという動きが高まっています。FSC認証の紙容器を使用することで、プラスチックごみの削減にもつながるでしょう。
<廃材を利用した容器>
本来廃棄される予定だった材料を再利用することも、環境保全の観点から注目されています。代表的な原料に「バガス」と呼ばれるさとうきびの搾りかすがあり、容器に再生したものを「バガス容器」と言います。
<石からできた資材>
最近では、日本が埋蔵する石灰石を主原料とした「LIMEX(ライメックス)」という新素材も登場しています。紙のように印刷・再利用ができ、プラスチックと同じく耐水性に優れた素材です。レジ袋や名刺などに利用され、木を使わずに水の使用料も少ないことから、資源の節約に貢献できるとされています。
自社の商品をプラスチック容器に入れる場合は、容器包装リサイクル法に基づき、使用後のリサイクルについても考えることが大切です。また、企業だけでなく消費者一人ひとりが意識してごみを減らしていくことも求められます。今後は3Rの取組を積極的に行い、消費者ができる限りごみを出さないような容器を選択することが、製品化のポイントになると言えるでしょう。