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2024年05月06日

【コラム】プラスチックへの印刷に使われるパッド印刷とは?メリットとデメリットを紹介

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「パッド印刷」と呼ばれる印刷工法があるのをご存じでしょうか。やわらかいシリコンを用いてスタンプのように被印刷体にデザインを転写する方法のことで、私たちの身近な商品にもよく使用されています。

今回はパッド印刷について解説していくので、印刷方法に迷われている方は、ぜひ参考にしてください。

 

 

パッド印刷とは

 

パッド印刷とは、どのような印刷工法なのでしょうか。以下では、印刷カテゴリーも含めて解説します。

 

・パッド印刷の概要

シリコンパッドを使う「パッド印刷」は、約60年前にドイツで誕生した印刷工法です。

弾力のあるシリコン製のパッドがインクを拾い、スタンプの要領で被印刷体に転写して印刷します。シリコンを使うことで、曲面や立体、高低差も問わずに印刷することが可能です。また、他の印刷工法と比較しても、細部まできれいに印刷することが得意なため、微細な文字を使用する際にも活躍するでしょう。

印刷カテゴリーとしては、オフセット印刷の一種に分類されます。

 

パッド印刷の仕組み

パッド印刷には、「オープン式」「カップ式」と呼ばれる2種類の方法があります。特に普及しているのはオープン式のほうで、印刷方法は以下の通りです。

 

印刷したいデザインをエッチングした版にインクを流し込む

ブレードと呼ばれる刃物部分で余分なインクを取る

シリコンパッドを押し当ててインクを拾う

インクの付いたシリコンパッドを被印刷体に押し当てて転写する

 

 

パッド印刷に必要なもの

 

次に、パッド印刷の際に必要な用具を紹介します。

 

・スチール版

デザインの基となるスチール版は1つのデザインに付き1つ必要で、凹状に加工されています。スチール版といっても、印刷する数量によって材質は変更可能です。

一般的に使用されているタイプは、0.5mmの厚さで5万ショット、10mmの厚さで50万ショット使用できます。

 

・シリコンパッド

インクを被印刷体へ転写するために必要なシリコンパッドは、被印刷体によって固さや形状、大きさなど、さまざまな用途に対応しなくてはなりません。適したシリコンパッドを選定することで、よりきれいに印刷することが可能です。

製造会社によって対応できる材質や硬度は異なるため、印刷したい被印刷体に対応できるシリコンパッドがあるか確認しておきましょう。

 

・治具

治具には、シリコンパッドがインクと被印刷体を往復する際、繰り返し同じ位置に印刷できるように固定する役割があります。たとえスチール版やシリコンパッドをきちんと選定していても、治具が不安定ではズレてしまい、きれいに印刷することは難しいでしょう。

パッド印刷を行ううえで球体や曲面など、被印刷体を固定しないことには作業もできない形状のタイプが多いこともあり、治具の重要性は大きいと言えます。印刷数やコストに応じて治具にかける費用も異なるほか、治具を必要としないケースもあるため、事前に相談して決めるのがおすすめです。

 

・インク

パッド印刷が印刷する材質は、プラスチック・布・ガラス・木材など多岐にわたります。幅広く対応するためにも、インクも被印刷体に合わせて選定しなくてはなりません。

インクを選ぶ際は、被印刷体の耐性にも注意しましょう。化粧品関係であればアルコール耐性、アウトドア用品関係であれば耐候性など、それぞれに適した耐性のインクであることが重要です。

被印刷体の材質が細かくわからない場合や特別な耐性を要する場合、きちんとインクが密着するかも兼ねて、テスト試作を行うことをおすすめします。

 

 

パッド印刷のメリット

 

特殊な印刷方法であるパッド印刷には、さまざまなメリットがあります。以下で確認してみましょう。

 

・曲面や凹凸面にきれいに印刷できる

弾力のあるシリコンパッドは被印刷体の形にフィットするため、曲面や凸凹面にもしっかりと密着します。他の印刷方法では真似できない特殊なこの印刷方法は、パッド印刷の一番のメリットといっても過言ではないでしょう。

 

・細かな表現や連続印刷が可能

パッド印刷のインクなら、濃度の濃さも調節できます。「半調刷り」と呼ばれるその手法は、印刷濃度を50%ほど下げることで、明るさなどの色味の表現を可能にしました。細かい文字のデザインや、陰影をつけたい場合にも役立つでしょう。

また、濃度を下げることでインクの乾きも早くなるため、「重ね打ち」や「多色印刷」なども行えます。

 

 

パッド印刷のデメリット

 

メリットがある反面、パッド印刷ならではのデメリットもあります。リスクを把握したうえで、商品に応じた印刷方法を考えることが重要です。

 

・広範囲の印刷ができない

形状や細かいデザインに長けたパッド印刷ですが、転写に使うシリコン製のパッドの大きさには限りがあります。容器自体の種類やデザインにもよりますが、50×50mmサイズが最大のため、広範囲の印刷はできません。

パッド印刷は、あくまでワンポイント印刷に特化している方法と言えるでしょう。

 

・印刷にムラができることがある

スタンプを押すように印刷するため、ベタ塗りの範囲が広いとムラになりやすく、きれいに印刷できない可能性があります。インクを均一に調整するのが難しい点も理解したうえで、塗りつぶしのデザインは避けて考えましょう。

 

 

パッド印刷と比較される印刷

 

パッド印刷方法と比較される印刷方法に、「グラビア印刷」と「シルクスクリーン印刷」があります。以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

 

・グラビア印刷

グラビア印刷は、雑誌のグラビア写真の印刷に使われていたことからその名が付きました。細かな濃淡まで表現できるため、美しい写真画像を印刷できる反面、版を作成するのに時間がかかります。ただし、その分耐久性が高く、大量生産に向いた印刷スピードも兼ね備えていると言えるでしょう。

プラスチック容器の場合、成型する前のフィルムやシートに印刷します。成型後にデザインが伸びてしまうことから、複雑な形状に印刷するのは向いていません。

パッド印刷とグラビア印刷では、定位置への印刷という点が大きく異なります。

 

<メリット>

大口ロットの印刷に適している

細かい濃淡の表現に優れている

印刷スピードが早い

 

<デメリット>

複雑な版を使用するため、コストがかかる

伸びの複雑な側面などの印刷には不向き

 

・シルクスクリーン印刷

もともと版板にシルクを利用していたことから、シルクスクリーン印刷と言われます。

ナイロン、またはポリエステルなどで作った版板(スクリーン)に穴を開け、流し込んだインクをこすりつける方法です。カラーごとに版板を変えてインクを刷り込むため、平面や広範囲への印刷に向いています。

 

<メリット>

カラーごとに版板は必要だが、ロットが多いほど低コスト

被印刷体の材質を選ばない

インクを厚く塗れるため、下地の影響を受けにくい

 

<デメリット>

版板を置いて印刷するため、凹凸面のない平面への印刷しかできない

カラーの使用数が多かったりする場合は不向き

繊細な表現は苦手

 

 

まとめ

パッド印刷は、スタンプを押すように印刷する手法のことで、幅広い製品の印刷に利用されています。ワンポイントの印刷に特化しており、複雑な形状の印刷も得意としている方法です。

印刷方法を選定する際は、メリットやデメリットを踏まえたうえで、印刷したい被印刷体に応じて適した方法を検討しましょう。

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