【コラム】加工食品の販売に許可は必要?必要な資格や販売する際の容器の選び方を解説
加工食品の販売に許可が必要か疑問をもっている方に向けて、本記事では保健所からの許可要件や取得までの基本的な流れを紹介します。また、販売する際に気を付けておくべきことや、加工食品を入れておく際に重要な容器の選び方についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
■そもそも加工食品とは?
・加工食品の定義
加工食品という言葉に明確な定義はないものの、厚生労働省のe-ヘルスネットでは「食品になんらかの加工を施したもの」と説明されています。
私たちが日常で口にする肉や魚、野菜などの大半は長期間保存が難しいため、なるべく品質を維持できるように調味や加熱、乾燥などの加工が必要です。このように、さまざまな手法で食品に手を加えたものを「加工食品」と呼び、加工することで品質保存・有効利用・安定供給を実現しています。天然の食材を使っているという点では、ドレッシングや調味料も加工食品と言えるでしょう。
最近では、栄養調整や色・味・風味などの嗜好性の向上、利便性、調理の効率化を狙いとしたものも登場し、加工食品は家庭の食卓で 欠かせない存在になっています。
・加工食品の種類
加工食品の種類は多岐にわたり、冷凍食品やレトルト食品なども含まれています。農林水産省の食品表示基準では、加工食品の分類は以下の通りです。
農産加工品 | ● 麦類 ● 粉類 ● でん粉 ● 麺・パン類 ● 穀類加工品 ● 野菜加工品 ● 果実加工品 ● お茶・コーヒー・ココアなどの調整品 ● 豆類の調整品 ● 菓子類 ● 砂糖類 ● 香辛料 ● その他の農産加工品 |
畜産加工品 | ● 食肉製品 ● 酪農製品 ● 加工卵品 ● その他の畜産加工品 |
水産加工品 | ● 加工魚介類 ● 加工海藻類 ● その他の水産加工品 |
その他の加工品 | ● 調味料・スープ類 ● 食用油脂 ● 調理食品 ● 飲料 ● その他の加工品 |
■加工食品の販売には保健所の許可が必要!
加工食品を販売する場合は、食品衛生法に基づき、保健所の営業許可を取得する必要があります。
食品衛生法とは、飲食が原因となって起こる健康被害を防止し、食品の安全性を確保するための法律です。営業許可の義務があるのは、飲食店営業をはじめ、菓子製造業や乳製品製造業など32業種で、該当する場合は保健所から営業許可証の交付を受けなければなりません。ほとんどの加工食品は営業許可業種の対象になるため、販売したい加工食品がある場合は、まず管轄の保健所に問い合わせてみましょう。
・許可の取得要件
<設備が整っているかどうか>
加工食品の販売の営業許可を取るうえで、設備が十分に整っているかどうかは重要な要素です。具体的には、以下2つの基準を満たす必要があります。
● 共通基準
● 特定基準
共通基準とは、自動販売機を除き、すべての業種で満たすべき施設の基準のことです。床材や照明に関する「営業設備の構造」と冷蔵・冷凍庫などの「食品取扱設備」、衛生管理に関する「給水及び汚物処理」の3項目があり、それぞれ詳細な基準が設けられています。
特定基準は業種ごとに定められ、原材料を保管する場所や温度の条件を満たさなければなりません。
<食品衛生責任者の資格を保有しているかどうか>
加工食品に限らず食品の製造・輸入・運搬・販売をする場合は、「食品衛生責任者」の資格が必要です。食品衛生責任者は、設備の衛生確認や従業員の健康管理、食材の管理を正しく行うために配置されます。
食品衛生責任者は1つの施設につき1名が原則で、複数の施設を兼任できません。資格を取得するには、各保健所の講習を受講する必要があります。ただし、栄養士や製菓衛生師、調理師などの資格を保有している場合、受講は不要です。
■保健所からの許可を取得するまでの基本的な流れ
1.保健所に相談する
はじめに、加工食品の製造・販売用施設がある地域を管轄する保健所に相談しましょう。
施設や設備を新設する場合は、自治体ごとに営業許可の要件が異なるため、必ず着工前に問い合わせてください。相談する際は、食品衛生責任者の選定、必要書類・手続き方法の確認、食品表示ラベルや容器の準備なども併せて行いましょう。
2.必要書類の作成と提出
保健所へ相談後、すぐに必要書類を作成して提出しましょう。必要とされる書類は、次の通りです。
● 営業許可申請書
● 食品衛生責任者の資格を証明する書類
● 設備の配置図
3.施設検査の実施
営業許可を申請して書類審査が行われると、次は施設検査の実施です。施設検査では、保健所の食品衛生監視員が検査を行います。問題なく基準を満たしていれば、後日に営業許可証が発行されますが、施設に不備や問題があった場合は改善し、再度検査を受けましょう。
4.許可証の交付後営業開始
営業許可証が無事に交付されたら、営業を開始できます。保健所への相談から許可証の取得までにかかる期間は、事前相談で約2日、申請後に施設検査が実施されるまで約7日、検査後に許可証が発行されるまで約7日の目安です。
■加工食品を販売する際に気を付けておくべきこと
・容器で販売する際は食品表示の義務がある
食品表示法では、加工食品のうち、容器や袋で販売する際の食品表示の義務が定められています。加工食品の安全性や栄養成分などの情報を提示することは、消費者の健康被害を防ぐために欠かせません。
食品表示法で規定されている食品表示の項目は、次の通りです。
● 名称
● 原材料(添加物・アレルギー物質を含む食品・遺伝子組み換え食品も含む)
● 内容量
● 消費期限または賞味期限
● 保存法
● 製造者および販売者
● 栄養成分(カロリー・脂質・タンパク質・炭水化物など)
・衛生管理を徹底する必要がある
衛生管理を徹底することも、加工食品を販売するうえで重要なポイントです。食中毒や異物混入など飲食による健康被害のリスクを防ぐため、食品衛生の知識も学んでおきましょう。
・自治体ごとの条例や法令を確認しておく
加工食品を販売する際は、自治体ごとの条例や法令に必ず目を通しておきましょう。場合によっては、加工食品の製造・販売について、独自の条例を設けている自治体もあります。食品の製造・販売に関する条例の詳細は、各自治体のホームページで確認してください。
■加工食品用の容器の選び方
加工食品を販売する場合は、食品を入れる容器に注目することも大切です。容器の種類によって適した食品や保存期間は異なるため、適切な容器を選びましょう。
・容量を決定する
まずは、販売する加工食品の容量を決める必要があります。その際、商品のコンセプトや消費者ニーズをもとに完成イメージを作るとスムーズです。
具体的には、次のポイントに沿って決めていくとよいでしょう。
● 販売場所
● 陳列方法
● 購入後の保存場所・保存方法
● 消費するまでの日数
● 賞味期限から推測される使用量
・販売価格を定める
加工食品の販売価格を定めたうえで、容器にどれくらいのコストをかけるか考えます。容器のコストは、「販売価格-内容物の原価(材料費・製造費・梱包材費・人件費・配送費など)」で算出された金額を目安にしましょう。
・用途に合わせた素材を決める
加工食品を入れる容器は、用途に合った素材でできたものを選びましょう。たとえば、中身の品質を維持して販売したい場合は、ガラス製の容器がおすすめです。耐熱性や耐油性など、容器の素材によってメリット・デメリットもさまざまなため、加工食品の性質や特徴にも注目しましょう。
■まとめ
加工食品を販売する場合は、食品の安全性を確保するため、保健所の営業許可が必要です。営業許可を取る際は、申請方法や資格の取得、容器の準備なども考えて、余裕のあるスケジュールを組みましょう。