【コラム】リターナブル容器とはどんな容器? 利用するメリットについても紹介
リターナブル容器とは、使用後に回収・洗浄を行うことで再利用できる容器のことです。リターナブル容器は、日本だけでなく世界でもさまざまな取り組みが行われています。今回は、リターナブル容器について紹介します。
サステナビリティが重要視される近年、再注目されているのがリターナブル容器です。
まずはリターナブル容器について紹介します。
リターナブル容器とは、中身を消費した後に販売店を通じて返却・回収し、洗浄して再び利用する容器です。英語で「回転可能な」という意味の「turnable」に由来しています。
販売店や市町村から回収したリターナブル容器は工場へ運ばれ、洗浄後に再度中身を詰めて出荷されます。そのため、ゴミにならないうえ、原料や製造エネルギーの節約にもなる環境に優しい容器です。
また、形状を変えずに再使用することを「リユース」ということから、リターナブル容器は「リユースびん」「活きびん」とも呼ばれます。
日本で代表的なリターナブル容器は、ビール瓶や一升瓶、牛乳瓶などの瓶製品です。
瓶製品を回収・洗浄・再使用するリユースは、ガラス瓶が普及しはじめた明治時代から空瓶を回収・洗浄・再販する「びん商」によって、すでに行われていました。
他にも、サステナビリティな社会を目指す近年では、大規模なフェスやデリバリーなどで提供されるフードやドリンクに、プラスチック製のリターナブル容器を利用する場合もあります。
明治時代から利用されていたリターナブル容器ですが、昭和初期から平成中期頃はペットボトルや缶、紙パックなどの新しい素材の使い捨てしやすいワンウェイ容器が台頭となりました。
ライフスタイルの変化や容器の種類が増えたことから、リターナブル容器の利用量は減っているのが現状です。
しかしSDGsが重要視され、社会全体の環境への意識も高まった現在、再びリターナブル容器が注目されています。
政府は、平成7年(1995年)、「容器包装リサイクル法」 (正式名称=容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)を制定し、家庭から一般廃棄物として排出される容器包装廃棄物のリサイクルシステムを構築することにしました。 この制度は、平成9年(1997年)に一部施行され、平成12年(2000年)に完全施行となりました。
また、法施行後約10年が経過したこの容器包装リサイクル制度の課題を解決するため、平成18年(2006年)に、改正容器包装リサイクル法が成立し、平成19年(2007年)4月から施行されることになりました。
出典:容器リサイクル法とは
再注目されているリターナブル容器ですが、日本以外の諸外国ではどのような取組が行われているのでしょうか。
デンマークでは、リターナブル容器の使用を義務付けています。ビールや清涼飲料はリターナブル容器に変更するとともに、金属容器の使用を禁止しています。 特に清涼飲料のリターナブル容器は、瓶なら平均5~6年の間洗浄・再使用が繰り返されており、リユース率も90%以上です。
デンマークが清涼飲料の容器の高いリユース率を誇る理由は、飲みものを購入する際に自動的に加算される約20~60円の「パント」にあります。
パントとして加算された代金は、容器を再び販売店に持参すると金券として戻ってくるため、デンマークの人は積極的にリユースに取り組んでいるようです。
ドイツをはじめ、オーストリアやスウェーデン、スイスでは、強制的または一定の条件の下にデポジット・リファンド制度(預託金払戻制度)を導入し、リターナブル容器の回収のインセンティブを与えています。
また、なかでもドイツでは、1991年に制定された「包装・容器廃棄物の発生抑制に関する政令」において、再利用率が政令で定められた比率の72%(ミルクの飲料容器については17%)を下回る飲料容器には、デポジット・リファンド制度の導入を義務付けています。
フィンランドやベルギー、ノルウェーでは、再使用されずに廃棄されるワンウェイ容器に対して課税することにより、リターナブル容器の利用を促進しています。
たとえば、フィンランド、ノルウェーでは、容器を利用するときに製品の価格に一定金額の「デポジット」を上乗せして販売し、容器の返却時にデポジットを返金するデポジット制度を導入しています。
リターナブル容器を利用すると、消費者はもちろん企業にもメリットがあります。ここでは双方のメリットをそれぞれ見ていきましょう。/p>
リターナブル容器を利用すると、商品の価格が安くなる可能性があります。
なぜならリターナブル容器は返却・洗浄後、そのままの形で再利用することを目的としているため、原料や製造エネルギーの節約にもなるからです。
プラスチック容器や紙製容器など、ワンウェイ容器にかかる費用も抑えられるでしょう。
諸外国のように、リターナブル容器を利用する際には預かり金を支払うケースもありますが、容器の返却時に返金してもらえるので、実質預かり金は無料の場合がほとんどです。
家庭ゴミを削減できるのもリターナブル容器を利用するメリットです。
日本の都市ゴミ総発生量は45,359千tで、世界ランキングの順位はアメリカ、ロシア、ドイツに次いで世界4位となっています。
家庭ゴミの中でも、プラスチック容器・包装の1人あたりの廃棄量を比較すると、日本はアメリカに次ぐ世界2位です。
そのため、日本がリターナブル容器を積極的に利用し家庭ゴミを削減すれば、世界のプラスチックゴミ削減につながるでしょう。
<リピーターを獲得できる> リターナブル容器を導入すれば、リピーターを獲得しやすくなります。
というのも、顧客はリターナブル容器の利用時に払った預かり金を、容器の返却時に返金してもらうため、お店に足を運ぶ回数が自然と増えるからです。
特別なことをしなくても、リターナブル容器を導入するだけでリピーターを獲得しやすくなるのは、企業側にとっても大きなメリットと言えるでしょう。
リターナブル容器の利用でコストカットが実現可能です。
企業から排出されるプラスチックゴミは事業系ゴミや産業廃棄物に含まれるため、処理費用がかかります。
企業側がリターナブル容器を利用すれば、プラスチックゴミの減量化によって処理費用も削減できるでしょう。
サステナビリティを意識したリターナブル容器の導入は、企業イメージの向上にもつながります。リターナブル容器を利用しプラスチックの使用を減らす取り組みをアピールすれば、企業イメージが向上し、新たな事業や顧客獲得につながるきっかけにもなるはずです。
リターナブル容器とは、使用後に販売店を通じて返却・回収し、洗浄して再び利用する容器です。リターナブル容器の利用はプラスチックゴミの削減や製造エネルギーの節約にもつながります。
フードやドリンクの容器を使用している際は、今後リターナブル容器を検討してみてはいかがでしょうか。