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食品の安全性確保において、食品に直接触れる器具や容器包装の安全性は極めて重要な要素です。2020年6月に施行された改正食品衛生法により、従来の「ネガティブリスト制度」から「ポジティブリスト制度」への大幅な転換が図られました。この制度変更は、食品用器具・容器包装の安全管理体制を根本的に見直し、より厳格で予防的なアプローチを採用するものです。
ポジティブリスト制度では、使用が認められた物質のみを明確にリスト化し、それ以外の物質の使用を原則として禁止することで、消費者の健康をより確実に守る仕組みが構築されました。この変更により、食品関連事業者は新たな対応が求められることとなり、製造業者から流通業者まで、食品供給チェーン全体での適切な理解と対応が不可欠となっています。
本記事では、ポジティブリスト制度の基本的な仕組みから、従来制度との具体的な違い、そして事業者が知っておくべき実務上のポイントまで、分かりやすく解説いたします。
2018年に食品衛生法が改正された

2018年6月13日に公布された食品衛生法の改正は、食品を取り巻く環境や国際標準への対応などを踏まえた15年ぶりの大改革です。広域的な食中毒対策の強化、HACCPに沿った衛生管理の義務化、健康被害報告制度、器具・容器へのポジティブリスト導入、営業届出制度の創設、リコール情報報告義務化などを主な柱としています。
参考:食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について(2025年5月31日まで)
改正された背景
社会の変化と国際化が進む中、食の安全に対する課題が顕在化しました。前回の改正から15年が経過し、外食・中食の増加や世帯構造の変化、輸入食品の拡大など、食品を取り巻く環境は大きく変わっています。
また、広域的な食中毒の発生が課題となり、迅速な対応と情報共有体制の整備が求められました。さらに、東京オリンピック・パラリンピック開催に備え、国際標準に整合した衛生管理への対応も急務でした。
改正後の変更点
主な変更点は以下のとおりです。
・国や自治体間の連携強化と「広域連携協議会」の設置による食中毒対策
・すべての食品事業者に対するHACCPに沿った衛生管理の義務化(小規模事業者には簡易対応も可)
・特定成分による健康被害情報の行政への報告義務化
・食品用器具・容器包装へのポジティブリスト制度導入
・営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設
・自主回収(リコール)情報の行政報告義務化
参考:食品衛生法の改正について
食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度とは

食品衛生法の改正(2018年公布、2020年6月1日施行)により導入された「ポジティブリスト制度」とは、食品と接触する可能性のある器具や容器包装について、安全性が評価された合成樹脂のみの使用を認める規制の仕組みです。
具体的には、厚生労働省告示370号に基づく規格基準の別表第1として“使用を許可された物質”が記載されており、それ以外の物質は原則として使用不可とされます。すでに施行前に製造・販売されていた同等の物質については、経過措置として適合と見なされることがありますが、制度開始以降に新たに開発された物質は、個別にリスク評価を受けて告示への追加措置を経なければ使用できません。
また、製造業者にはGMP(製造管理規範)に基づく衛生管理の徹底と、販売先や取引先に対し「ポジティブリストに適合している」ことを説明・情報提供する義務が課されています。このように制度は、安全性の確保を第一としつつ、事業者の遵守と透明性を促す厳格な構造となっています。
参考:器具・容器包装のポジティブリスト制度(対象:合成樹脂)
食品用器具・容器包装のネガティブリスト制度との違い

改正前に日本で採用されていたネガティブリスト制度は、使用を原則認める一方、禁止する物質だけをリスト化する方式でした。そのため、リスト化されていなければ安全性に関わらず使用可能であり、新素材や未知の有害物質に対応しきれないという問題がありました。
一方、2018年改正(施行は2020年6月1日)で導入されたポジティブリスト制度は、使用できる物質を安全性が確認されたものに限定し、それ以外は原則禁止とする方式です。これにより、未知のリスクの排除や安全性の事前確保が可能となり、食品衛生上の安全性を飛躍的に高める措置となりました。
また、国際的には米国やEUでもこの方式がすでに採用されており、日本もそれらとの規制整合性を図る目的も含まれています。これらの点から、ポジティブリスト制度はより厳格かつ予防的な規制方式として、食品接触資材の安全管理を根本的に変えるものといえます。
ポジティブリスト制度の対象となる食品用器具・容器包装

ポジティブリスト制度の対象となるのは、食品と接触する器具や容器包装に用いられる合成樹脂です。具体的には、ポリエチレンやポリスチレンなどの合成高分子(基ポリマー)と、構成する合成樹脂の物理的あるいは化学的性質を調整する添加剤が含まれます。
さらに、たとえ本体が紙や金属であっても、食品接触面に合成樹脂でコーティングやラミネートが施されている場合は制度の対象になります。これらについては、ポジティブリストに記載された物質のみ使用が許可され、リスト外のものは原則使用不可となる点が特徴です。
ポジティブリストの対象となる物質
ポジティブリスト制度の対象となる物質は、大きく「基ポリマー(合成樹脂の基本構造となるモノマー由来)」と「添加剤」の2つに分かれます。基ポリマーは、プラスチック材料の核となる合成高分子であり、ポリエチレンやフェノール樹脂といった具体例も挙げられます。
一方、添加剤は、製品の強度や柔軟性、耐久性といった機能を高めるために最終製品中に残ることを意図して投入されるもので、可塑剤や安定剤、着色料などが含まれます。ただし、触媒や重合助剤、不純物といった最終製品に残存することを意図しない物質は対象外とされ、従来のリスク管理方法による対応が続けられます。
また、紙容器や金属缶のような器具・容器包装であっても、食品に接触する面に合成樹脂の層がある場合には、その層で使用される合成樹脂物質がポジティブリストの対象となります。なお、食品への溶出や浸出が0.01 mg/kg未満(無害と判断される量)であれば、非接触部分への使用は、リスト非収載物質であっても可能とする例外措置が認められています。
参考:器具・容器包装のポジティブリスト制度(対象:合成樹脂)
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食品衛生法の改正により導入されたポジティブリスト制度は、食品用器具・容器包装の安全性を従来以上に厳格に管理する重要な仕組みです。この制度により、消費者はより安心して食品を利用できるようになりましたが、事業者にとっては適合する容器包装の選定が重要な課題となっています。
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